バーンロムサイは、1999年に名取美和さんによりチェンマイ郊外に設立されたHIVに母子感染した孤児の生活施設である。名取さんは友人でタイに住んでいたドイツ人医師を訪れタイに滞在した時に、ドイツ人医師のもとHIV感染者の看護を助ける事になった。ある日HIV感染者の女性が亡くなる前に名取さんの手を取って「私はこれから天国に行くので心配ないが、残された子供がすごく心配だ」と嘆いた。名取さんは「心配ない。私が面倒を見るから。」と約束して母親を看取った。その後チェンマイ郊外にHIV感染孤児を養育する孤児院バーンロムサイを設立した。当時タイでは、エイズが猛威をふるっておりたくさんの人が感染し、亡くなっていた。この病気により両親が亡くなった子供、母子感染した子供も多くいたことから30人の子供を受け入れる生活施設を設立した。設立当初はエイズを発症し亡くなる子供も多かった。名取さん自身10人の子供を看取ることになった。現在では治療薬が普及して、普通の生活が送れるようになり、HIV母子感染も防げるようになった。現在バーンロムサイではHIV感染児童のほか、様々な事情で親と暮らすことが難しい児童も受け入れている。
バーンロムサイは、子供達の生活施設と同じ場所にあるコテージでの宿泊事業と、小物や洋服を製作する事業を営む現地法人と、タイバーンロムサイで生産された洋服や小物を販売した利益と日本国内で募集した寄付金をとりまとめ送金するNPO法人バーンロムサイジャパンからの寄付で運営されている。子供達が勉強だけでなく、アートやサッカーに興味をもってもらうように、日本からサッカー選手やアーティストが来て教えてもらうなどの様々な取り組みを行なっている。
OCAでは、2013年から図書館プロジェクトの運営に協力している。毎年40万円の寄付を行なっている。図書館は、バーンロムサイの子供達だけではなく、村の子供達の放課後の居場所になっている。以前は地域のなかでHIV感染や孤児に対する差別偏見があり、バーンロムサイと子供達は孤立していたが、図書館を開放することにより、バーンロムサイの子供達と地域の子供達が一緒にイベントに参加したり、勉強したりすることにより相互理解が深まり、現在では地域のコミュニケーションの中心になったという。読書により知識が身につくだけでなく、パソコンを順番に使う、蔵書を大事に扱うなど公共ルールも身につく効果もあるようだ。
OCAの図書館プロジェクトへの寄付金は、新しい図書やDVDの購入だけでなく、読書感想文コンテストやタイの祝祭日をテーマにした作文や絵のコンテストの賞品の購入費、パソコンやプリンターの維持費、消耗品の購入など運営経費のサポートに充てられている。この施設を活用することにより、子供達の教育の質が上がり、都市部と農村部の教育機会の差が解消される一助になるとよいと思う。子供達の将来の夢も育める場所になってほしい。