第一回 3月9日 関口輝比古さんのセミナー 「バンコックのスラムの現状」
3月9日国際労働財団バンコック所長の関口さんによる「バンコックのスラムの現状」というタイトルでセミナーを行いました。このセミナーは慶応大学国際関係会の皆さんからタイの経済格差について勉強したいとの要請を受けて行われました。
関口さんは麗澤大学卒業後タイの山岳民族の児童養護施設メーコックで7年半ボランテアとして働き、その後2010年から国際労働財団のバンコック事務所で所長を勤めています。タイに20年以上生活された経験から大変面白いセミナーを行って頂けました。
当日は慶応大学、中央大学、OCAのメンバーが14人参加しました。関口さんのセミナーの主な内容は以下の通りです。
バンコック最大のスラムであるクロントイスラムにはカンボジア人、ミャンマー人を含めて約10万人が生活する。ごみの山として有名なテープラクサー地区は、ミャンマー人が多く生活している。外国人労働者はタイ人が行わない汚い仕事を行って生活している。スラムに住む人たちはコミュニテイとして登録すれば政府から水、電気、インフラの整備の支援を受ける事ができる。タイの国籍を持っていれば政府から福利厚生カードの支給や、給付金を受ける事ができる。しかしタイの国籍を持っている人は限られているので政府の支援は充分に行き渡っていない。
タイでは公立学校で初等教育、中等教育を無料で受けられることになっているが、実際は制服、バス代、給食などの費用がかかり1日の収入が300バーツ(1000円)程度のスラム生活者では負担できない。また学校側も外国人労働者の子供を受け入れようとしない。関口さんはゴミの山で有名なテープラクサー地区でラーニング教室を開いてミヤンマーの子供達にミャンマー語の基礎教育を教えているが、タイ政府は原則教育省に登録した教育機関しか認めないためタイ政府の支援を得るのは難しい(日本も外国人労働者が多くなってきたが、外国人労働者の子供達はどのような教育を受ける機会があるのだろうか?)
セミナーの参加者から以下のようなコメントを頂きました。
慶応大学 斎藤さん
タイの経済格差やスラム、移民労働者の問題などはタイの社会システムの中で構築されており、簡単には解決できない問題だということを身に染みて感じました。
周辺の国から移住してきた労働者たちがひどい扱いを受け、搾取されているにも関わらず「自国に戻るよりもタイのスラムで生きている方がいい」と考えるほど、タイの周辺国(ミャンマー、ラオス、カンボジアなど)のくらしが更に苦しいものであるということも本日のセミナーから分かり、タイの周辺国の実態についても興味を持ちました。
以前OCAの皆様と取り組ませていただいた勉強会で得た知識を更に深めることができました。メーコックビジットや山岳民族の勉強会といった今後の活動も楽しみにしております。
慶応大学水野さん
陸続きの国境がない島国である日本に住んでいては起こることのないようなことについて触れることができ、非日常で大変面白かったです。
また、タイで貧富の差が生まれてしまう背景には古くから根付いた複雑な政治的背景がたくさん絡んでいるとのことでしたが、不敬罪等で重く罰せられてしまう恐れもある中これから若い世代がこの難題をどのように解決していくのか、個人的に非常に興味深く思っています。
今日時間の都合上拝聴できなかった部分は、是非またどこかでお聞かせ頂きますととても嬉しいです。
最後にオンラインセミナーの様子を紹介します。
関口さん大変貴重な情報をご説明頂きありがとうございました。今回話しきれなかったトッピクスを別の機会でお話しいただきたくよろしくお願い申し上げます。
さて第2回のセミナーはチェンライの山岳民族の児童養護施設「メーコック」をオンラインで訪問して、「タイの山岳民族の現状」について勉強したいと思います。皆さんのご参加をお待ちします。
以上
(報告 高橋)