北部タイツアー 2022年

コロナ禍の中、中断されていた「北部タイツアー」が3年ぶりに10月23日〜30日の予定で実施された。日本からは中央大学小森谷ゼミ生13名と小森谷教授、埼玉大学から2名が参加。コロナ感染対策を考え3名のスッタフ、チュラロンコン大学からは6名の学生とスタッフ2名が参加、総勢27名のツアーとなった。またチェンライではMFU(メーファールアン大学)の学生10名とRapipong先生が参加し児童養護施設のメーコックで一緒に過ごした。
 
今回のツアーでは学生たち自らがこのツアーを作り上げていくという主旨のもと、学生たちにそれぞれの役務をお願いした。全体を統括するスケジュール担当、感染対策担当(出発前一週間の検温チェック、出発72時間前のPCR検査実施指導、ツアー中の毎朝の検温、途中でツアーに参加する人たちの抗原検査キッドによるチェック等)、トランスポーテション(移動に関してその方法や手続き、荷物のチェック等)ツアーの記録を動画で残す動画担当などの役務につき、参加者を3つのグループに分けて、それぞれが責任を持って担当してくれた。
コロナも落ち着きをみせたとはいえ今回のツアーは最大限の注意と対策を考え、参加学生たちの高い意識や努力により実施された。お陰様でツアー中、感染者も発熱者も全く出ずに無事終了することが出来た。
また、今回のツアーでは今年8月に山梨県小淵沢「女神の森」で実施した「サマーキャンプ」に参加してくれたチュラやMFUの仲間たちが出迎えてくれて、最後まで行動を共にしてくれた。サマーキャンプで繋がった友情が再び花開いたツアーとなった。

これまでツアー参加学生たちはWebを通じタイの勉強会を重ね、タイの経済格差の問題やタイ北部の少数民族の実態などを勉強してきた。その時の講師としてお世話になった国際労働財団バンコク所長の関口輝比古氏の案内で、バンコク到着の翌日、バンコク市内にあるスラムの一つである「オンヌット」のコミュニティーを訪れた。

チュラロンコン大学の学生たちもこれに参加、チュラのある学生はバンコクにスラムがあることは知っていたが、こんな環境で厳しい生活を強いられているのを知って、この国の新しい視点を見ることが出来て良かったと感想を述べていた。

コミュニティー視察後場所を移して関口氏よりタイの所得格差やスラムの課題、現状についての話をお聞きした。タイにおける都市と地方との経済格差が激しい現実、タイの経済発展の為、バンコク周辺では常に労働不足が続き地方からの出稼ぎ労働や周辺のミャンマー、ラオス、カンボジアからの外国労働者がスラムに集まり3kと呼ばれる厳しい仕事に従事している。そこにいる子供たちも充分な教育を受けられていない。厳しい状況下でも自国に帰るよりもスラムでの生活を続けているとのこと。バンコクの全人口の5分の1にあたる200万人ほどが2,000近くのスラムで生活している現状を知らされた。

10月25日 チュラロンコン大学を訪問。経済学部のシリマー先生をはじめ学生たちが迎え入れてくれて中央大学とのセミナーを実施した。

中央大学小森谷ゼミとして3つのグループから日本での研究内容のプレゼンテーションが行われた。

チーム1は「タイの政策の有効性と日系企業の立地要因への影響について」

日系企業のタイへの立地要因が変化している現状から、何が要因として挙げられるかタイの政策とともに明らかにしていった。また日本からタイへの直接投資について、フットルースな産業(立地移動をさせやすい産業)とそうでない産業について、それぞれ環境政策の影響の受けやすさの研究発表を行った。

チーム2は「古着貿易を促進すべきか否か」と題して、繊維産業が重要とされる国、GDP内の繊維産業が占める割合が高い国では古着の輸入がGDPの成長率に影響を及ぼす可能性についての発表を行った。

チーム3では「オンラインの短期留学が当事者に与える影響について」

コロナ禍で増えた“オンラインでの留学”がどの程度効果があるのかを体験者のアンケートを基に検証、発表をそれぞれ行った。

セミナー終了後はチュラロンコンの学生たちの案内でキャンパスツアーを行う。

チュラの大学設立を説明する歴史博物館や最新のデザインで作られた図書館などを見学。

特にその洗練された図書館では日本の学生たちは大変な興味を抱いていた。

キャンパスツアー後はチュラロンコン大学が用意してくれたウエルカムパーティの夕食会。

楽しいひと時を過ごしお互いの交流を深めていった。

10月26日 チュラロンコン大学から8名が参加し、朝の早い便で一行はバンコクからチェンライに向かった。チェンライではMFU(メーファールアン大学)を訪問。Rapipong先生他10名の学生が出迎えてくれた。今回はMFUの学生による大学の説明やチェンライの歴史に関するプレゼンテーションが行われた。

セミナーの後、学生とのキャンパスツアー。ゆったりとした広大なキャンパスに日本の学生たちは目をみはっていた。ツアー中、数年前にアジアンビートでMFUを訪れた際に知り合い、ずっと友情が繋がっていたYotopaが突然現れ、スッタフである小林春菜との再会の様子は周りの参加者たちの目を惹きつけていた。

MFUの学生10名とRapipong先生、Yotopaも加わり一向はタイの山岳民族の児童養護施設であるメーコックへ。

ここではスラムを案内してくれた関口さんも加わってくれた。関口さんは大学卒業後ボランティア活動を通じメーコックで7年半を過ごした。

夕食の前には関口さんが講師となり、タイ北部の山岳民族や都市と地方の格差、子供たちへの教育の問題や差別、貧困さについて話をしていだき、学生たちとの議論が進んだ。またこの施設の設立に尽力した一人で現在ここに生活している戸邊先生(旧聖学院中等高等学校長)より現在のメーコックの子供たちやその状況について話を聞いた。

夜はメーコックの子供たちと交流。民族衣装に身を包んだ子供たちがダンスを披露してくれた。その後皆なでコック川の川辺におりコムロイ(ランタン)を星が煌めく夜空にあげたり、花火などで子供たちとの交流が続いた。

10月27日 メーコックの対岸で象に乗り、少数山岳民族の村を訪問した。

昼食後MFUの仲間と別れ、一行はチェンマイに向かった。3年前に比べ道路の状況も整備され約6時間のバスの旅となった。

チェンマイのバーンロムサイが経営するhoshihanaに落ち着いた一行は、翌日朝早く起きて朝市(ハンドーン マーケット)を視察。朝食をここで摂ると同時にこの地域に生活する人々の様子を視察した。

hosihanaに戻り隣接するバーンロムサイを視察。ここはHIV感染で苦しんだ親の子供たちや地域の貧困生活を強いられている子供たちが暮らす児童養護施設。我々はタイ人と日本人に別れ、施設の創立や現状についてそれぞれの母国語で話を聞いた。日本の学生はこれまでWebを通じての勉強会で繋がってきたバンーロムサイの設立者である名取美和さんのお嬢さん名取美穂さんから説明を受けた。美穂さんは我々の訪問に合わせ日本から駆けつけてくれた。Web上でしか話が出来なかった学生たちと実際にあって話が出来たことを大変喜んでくれて歓待してくれた。

その後我々の訪問を楽しみに待っていてくれた施設の子供たちとサッカーやバトミントンで交流を行った。子供たちのサッカーの上手さには学生たちも下を巻いていた。

昼食後、チュラの学生の案内でチェンマイの街へ。チェンマイの大本山である標高1080mにある「ドイ・ステープ」寺院を訪れた。1383年、当時のクーナ王によって建立された大寺院で今も人々の熱い信仰を集めている。仏舎利(ブッダの遺骨)が納められているという金色に輝く仏塔の周りを3回歩き祈りを捧げる。私も無事このツアーを終え皆んなが元気に帰国出来ることを祈って線香を片手に周り、お祈りをした。ここからはチェンマイの街が一望できる。

10月29日 午後バンコクへ戻る。この日は自由行動となりチュラロンコンの仲間とバンコク市内の観光。

10月30日 午後遅めからの昼食を兼ねてのさよなら会(ふりかえりの会)となる。

これまでのツアーの思い出や一緒に行動を共にして来たチュラの仲間への感謝の気持ちを込めてそれぞれが語り合い交流を行い話はつきなかった。

友情を再確認した「さよなら会」の後、その日の深夜便でツアー一行は日本への帰路に着いた。到着は31日の朝5時40分となった。

2022年 「北部タイ研修ツアー」参加者メンバー

Chuo University

Saitama University

Chulalongkorn University

 2022/11/23