タイの勉強会 第3回セミナー 9月14日「バーンロムサイと社会貢献」

第3回セミナー報告書

東田さん

中央大学3年の東田凌です。9月14日に行われた第3回タイ勉強会のセミナーの模様を報告します。今回は「バーンロムサイと社会貢献」というタイトルで名取美穂さん、遠田健太郎さんに講師をお願いしました。当日は中央大学、慶応大学、OCAの皆さんを合わせて30人の参加者が集まり大変面白いセミナーとなりました。

名取さんと遠田さん
  • バーンロムサイの紹介

名取さんが孤児院の内部にカメラを持って歩きながら紹介してくれた。事務所の前の大きなガジュマロの木、子供達の家、ICU隔離病棟、図書館、HIVの薬の部屋。子供達は学校に行っていていなかったが静かな、緑あふれる雰囲気だった。

遠田さんが孤児院に隣接するゲストハウス「ホシハナ」を紹介してくれた。11棟のゲストハウスがあり、縫製場、ショップ、ダイニング、大きなプールがある。子供達がHIVだからということで一般のプールに入れないことを知りアルマーニジャパンが2003年に寄付してくれた。このプールは2008年に小林さとみさん主演の映画の舞台になった。プールのそばに建設されたゲストハウス「スイカハウス」の設備を紹介してもらった。

  • バーンロムサイをどうして始めたのか?

名取さんからバーンロムサイを始めたいきさつを話して頂いた。1996年友人の縫製工場のお爺さんと女医さんを訪ねてチェンマイに遊びに来た。チェンマイの色とりどりの美しさに心を奪われた。友人の女医さんはお寺の裏で末期患者の世話をしていた。当時はエイズで死ぬ人が多かった。たくさんの病人がいて人手が不足している病院が印象に残った。

1997年に母がチェンマイを訪問した。母は友人の女医さんと一緒にエイズ末期患者の世話をした。まだ20歳にも満たない女の子がエイズにかかり「自分が死ぬのはしょうがないが、残された子供がとても心配だ。」と漏らした。母は「自分は今まで自由に生きてきた、今後この子供達たちの為に何かできないものか」と考えた。ちょうどそのころジョルジュアルマーニさんからエイズの支援をしたいが何か良い案はないかとの問い合わせを受けていた。母も私もHIV感染孤児の面倒を見る孤児院を建設しようと決断した。

母も私も孤児院の建設や運営については全くの素人で何も知らなかった。自分たちで食事を作り引き取ったHIV感染孤児を育てるのに一生懸命だった。多くのボランテアの方々が助けてくれた。しかし開園した当時は良い薬もなく2年で10人の子供を亡くした。大変なショックを受けた。タイの人たちは輪廻転生の教えを信じていて、「子供達がなくなってもすぐに生まれ変わり、次は健康な子供に生まれ変わる。」と言ってくれた。この言葉に助けられた気がする。今年で開園から23年になる。今は良い薬ができてその後一人も亡くなった子供はいない。

  • その後の孤児院の経営でどんな問題があったの?

開園当時のバーンロムサイは100%ボランテア、100%寄付で運営されていた。開園当初はHIV感染孤児院として話題を集めたが、その後話題にもならなくなった。ボランテアの方々も余裕のある時は助けてくれるが余裕のない時期もすぐに来て、ボランテアと給与を支払う仕事をどこで区切るのかが課題となった。孤児院の経営を安定させるために収益がきちんと出る事業をどのように確立してゆくかも大きな課題となった。

2011年東日本大震災が起こり日本からの寄付は東北の被災地に向かい、バーンロムサイには入ってこなくなった。それまで寄付70%、ゲストハウス、物品販売30%の構造を大きく変える必要が出てきた。物品販売に力を入れ、ブランドを確立して日本全国に売り歩く販売活動を行った。ホシハナをリゾートとして宣伝することにした。「めざせ100%自立」を掲げて子供達もホームも自分たちも自立してゆくことをめざした。様々な努力の結果コロナ前までに物品販売、ホシハナで75%、寄付25%の体制まで持って行けた。

そこでコロナになった。2020年3月ホシハナの予約がゼロになり、物販もオンラインしかなくなった。ホームを守るために2020年6月に全ての事業を停止して従業員は失業保険を受けるようにした。日本人のスタッフは全て帰国し、母だけが孤児院に残った。最近やっとホシハナにタイ人のお客が戻り始め、オンラインの予約が再開した。これからコロナ前の活発な状態に復帰して行くと期待している。

  • 周辺の村の子供達との関係

バーンロムサイが開園した当初村人たちはエイズの家ができたと怖がり、子供達も近づかず、郵便屋さんも来なかった。こういう状態がかなり長く続いた。先ほど御覧になった図書館を作り、パソコン、DVD、本を自由に使い、読めるようにした。周辺の村に住む子供達が図書館のパソコンを使い宿題をやるようになって、図書館に来る子供達が急に増えた。差別がなくなるまで5~10年かかったが、今では村人たちも子供がバーンロムサイに行っているなら安心だという感じになっている。またサッカーチームを作って周辺の村の子供も加わって活発に試合を行っている。このような活動が子供達を支えていると思う。

バーンロムサイFCの子供達
  • 学生達からの質問
  • 子供達はどのような教育を受けているか?

開園当初子供達は学校へ行くこともなかった。ある日子供の一人が「お母さん、僕学校に行きたい。」と言った。近くの学校の校長先生と相談して学校に通うようになったが、2週間で校長先生から「他の子供達の親が一緒にするのに反対するので来ないでもらいたい。」と言われた。その後はホームスクールという形で孤児院のなかで教育をした。その後市内の学校で受け入れてくれ、最近近くの学校でも受け入れてくれるようになった。

HIV感染孤児の子供達はヒステリックになる、少し遅い、落ち着かないなどの特徴がある。勉強はできなくても、何が得意か子供一人ひとりの強みを見つけてその強みを伸ばしてあげる事にしている。

子供達が書いた絵を絵葉書にしたり、ビルの壁に使ったりして絵の上手い子は自信を付けさせる。小学校から声をかけられてタイのロボオリンピックで7位になった子もいる。勉強ができるようになることを期待するのではなく子供達の個性を伸ばしてあげたい。

  • タイの政府からの支援はあるのですか?

タイの政府からの補助はほとんどない。全て自分たちで自立して行く他ない。

  • なぜタイで孤児院を始めたのですか?

初めから孤児院をやろうと考えたら損だからやらないと思う。結局チェンマイに恋しちゃったんだと思う。自分の心が動いて、面白いなーと思ったら、そこで働く、たまたまそれがタイで、チェンマイで、HIVで、ボランテアだったんだと思う。興味があることに突っ込んでゆく、自分の好きなことを見つける、自分の好きなことを見つけたら、問題があっても頑張れると思う。

  • 最後に学生達に伝えたい事ありますか?

コロナで皆の考え方も変わったんだろうなーと思う。以前自分は何になりたい、こういう人生を歩きたいと固定的なゴールを決めていたのが、皆に死は来る、皆平等だと思うとあまり固定的なゴールにとらわれないで人生の道すがらを楽しむ時代になるのではないかと思う。タイではマイペンライ(大丈夫)と言う考えが一般的で、洪水で大変な被害が出ている中、おじさんが子供を連れて洪水だから魚がたくさん釣れるよと魚釣りに行く。しんどいけど楽しむ、何とかなるよと一緒に頑張る、右往左往する道すがらも楽しんでしまう、そういう余裕のある生き方を楽しんでもらいたい。

  • 学生達の感想

1.貴重なお時間ありがとうございました。
孤児院も、エイズも私たちの生活ではあまり触れることのない分野で、そんな分野に楽しそうに好きになっちゃったから、という素敵な理由でのめり込んでいる名取さんのお話しはとても興味深いものでした。新しいことに挑戦するときにはときめきが大事と言う言葉が刺さりました。いま就活でそのようなことを悩み考えている時期なので参考にしたいと思います。
ありがとうございました。(3年生)

2.バーンロムサイの施設がどのような感じなのかよくわからなかったのですが、中継を通して、とてもきれいで落ち着ける場所だと思いました。実際に行くのがさらに楽しみになり、色んな場所に行って見たり、子どもたちとも遊んでみたいと思いました。お話の中で、色々大変な思いをしたエピソードもあり、バーンロムサイがどれだけ大事な存在か、今後も子どもたちにとっても必要な施設だと感じました。HIVについても中々周知されておらず、偏見もまだあるというお話を聞き、今後HIVについての知識を多くの人に広げるためにも、私たちもHIVについて知り、周りの人にも教えていくことが重要だと思いました。
ありがとうございました!(3年生)

3.名取さんのお話で「まるでチェンマイに恋に落ちてしまったみたいだった」と仰っていた事がとても強く印象に残っています。お話を聞くまで、何故急にタイで孤児院を立ち上げることになったのかその経緯についてとても気になっていたのですが、直接お話を聞いて現地での様子を拝見させて頂いて本当に運命的な出会いだったことが伺い取れました。生き生きとタイ、チェンマイの魅力についてお話頂くうちに、私もタイに行きたい、バーンロムサイの子供たちと触れ合いたいという気持ちが強まりました。私は今年はタイに行くことが出来ないですが、今度タイに行くまでにもっと深くタイの文化に触れて、行った際にはその魅力を存分に享受出来たらいいなと思っています。こうしたオンラインでのお話会を通して、世界とオンラインで繋がることで国境を超えても世界が繋がっていることを改めて実感することが出来、貴重な経験になりました。またゼミ等での活動に関係なくホシハナリゾート、是非泊まりに行きたいです!本日は本当にありがとうございました。(2年生)

以上